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伊藤博康のテツな“ひろやす”の鉄道小咄

10/12(土)~27(日)明治村の御料車2両、内部特別公開を6年ぶりに開催

2024年10月18日

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内部特別公開をはじめた、明治43(1910)年製6号御料車の内部


気品と威厳に満ちた車両は、明治村に保存されている明治43(1910)年製6号御料車です。中央に右向きにあるソファに天皇が着座されます。
通常、この様子は右手の車外から見学することになりますが、10/12(土)~27(日)は6年ぶりに内部特別公開をしています。
毎日、10:30~12:00と13:00~15:00の計3時間半の公開です。
10名ずつ順番に客車デッキに案内され、客車の入口扉のガラス越しになりますが、このように内部を見学することができます。
通常とは見え方が大きく違い、車内の隅々までしっかりと肉眼で見ることができます。
また、御座の後方には侍従が行き来するため通路があるのですが、その通路の存在は通常良く分かりません。それが、内部公開時にデッキに立つと、通路があることがはっきりと分かります。

乗降扉の蝶番(ちょうつがい)にも細かな細工がされている


こちらは前述の6号御料車の隣に展示されている、5号御料車の乗降扉を開け閉めする蝶番(ちょうつがい)です。
菊の御紋章などがあしらわれた細工が見事ですが、そのネジ山にまで細工がされているという丁寧な造りには驚かされます。
乗降扉ですから、通常は閉まっていて見られません。これまた内部公開時にしか見られないものです。
御料車の見学時には、デッキに乗り込む前にこの蝶番の説明がされます。小さな金具ですが、しっかりと目に焼き付けておきたいものです。

昭憲皇太后用の5号御料車の内部は、落ち着いた色合い


5号御料車は明治35(1902)年に、明治天皇のお后であられた昭憲皇太后用に造られた御料車です。
落ち着いた内装は、天皇用の華やかさとは異なるもので、その心遣いを直に感じられます。
天井の左右には、飛ぶ鳥の絵が描かれています。左上が帰雁、右上が来燕…雁が帰り、燕がやってくるのですから、春を表しています。
この帰雁来燕は、万葉集に収められた大伴家持の「燕来る時になりぬと雁がねは本郷偲ひつつ雲隠り鳴く」が元になり、その後の画家に描かれるようになったもののようです。
二十四節気では「春分」に続く「清明」で、4月4日~18日にあたります。
暖かくなってついまどろんでしまう陽気を思い起こしますよね。
その様子を下から仰ぐ意図でしょうか、羽ばたいている鳥たちを下から見上げた図となっています。

6号御料車の天井にある木壁画


5号御料車、6号御料車ともに、見始めると見どころがいっぱいあります。
それらを説明して下さるのですが、一度にいろいろと聞くとどこを見ていいのか分からなくなったりします(汗)
そんななか、今回の公開に先立つ取材で説明していただき、印象に残ったのがこの天井の隅にある木製の壁画でした。
炭で描かれているように見えますが、炭ではなく色の濃い木片を埋め込んであるのだそうです。そう言われてまじまじと見直しましたが、さすがに埋め込んであるところまでは見極められませんでした。まったくの平坦な面に見えます。
ひとつひとつがこのように手の込んだ美術工芸品でできている御料車です。
これは、天皇・皇后が御乗用になる車両だからというだけでなく、藩制がなくなり、お抱えの絵師・木工職人など多くの多彩な芸術家たちの発注元がなくなったことによる伝統技術の消失を防ぐ意味もあったといいます。
発注を受けた職人たちは、やり甲斐のある仕事として懸命に取り組んだことでしょう。
そんな作品群を間近に見られるチャンスです。

これら2両の御料車は、いずれも国鉄時代から鉄道記念物に指定されています。
明治村の正面玄関を入ってすぐの1丁目にある鉄道局新橋工場に展示してあります。
今年は蒸気機関車12号がイギリスから輸入されて150年、明治村で運行を開始してから50年になることを記念しての催しの一環での特別内部公開となっています。
この機会を見逃すことなく、ぜひご覧下さい。

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