韓国と日本の「入浴文化」の違い ~その1~
2016年2月5日
皆さん、ちょっと聞いて下さいよ!
「朴」には来日して以来、思いもよらない「ハプニング」「トラブル」が度々起き、自分の人生嫌になっちゃったこともあったけど、それも「異文化コミュニケーション・トレーニング」だと思い、体験学習に臨む姿勢で日本での生活を過ごしてきたんですよ。
「24時間×365日×約30年」も名古屋で生活してりゃ色々な人に出会い、様々な事が起き、晴れの日もあれば雨の日もある。そのくらいのことなら「朴」も十二分承知してるけど、先日は抑えきれないほどめぇ~っちゃ腹立たしい事があったのよ。
韓国から、知り合い「某さん」が「朴」を頼って名古屋に観光に来ることになり、「朴」は昨年の11月に「姉」と共に愛知県のとある露天風呂付き〇〇温泉に下見に行ったわけ(ちなみに、「朴」は日本の「温泉」は2度目で「露天風呂」は生まれて初めて)。
ところでね、温泉の「洗い場」という「狭い空間」で1時間程の「短時間」に「全裸」の状態で「揉める事」って普通ありますかね???可笑しい事に「朴」にはあるの。
「朴」の隣に座ってた気の短い「姉」はさっさと体を洗い湯船へ。動作の鈍い「朴」は石鹸でノロノロと身体を洗っていたら「姉」が座っていた席に、ある女性が堂々と座るやいなや、体にお湯をかけ始めたわけ。
朴:あ~の~う~、
一瞬動作を止め「何だよ」という表情で「朴」の方を見る女性。
朴:すいません、そこ、人がいるんですけど。
女性:人がいないのにいるって?
「朴」は女性から「ノンバーバルコミュニケーション ☆ 非言語コミュニケーション」で「透明人間?」と訊かれてるような気がして、
朴:ついさっきまで使ってて、只今湯船につかってるんですが……
女性:ここ、「予約席」ですか?
朴:予約はしてないけど、もう少ししたら戻って…き…き…(何だか気まずい空気)…
「朴」よりぽっちゃりして大柄の「40代?」の女性はいきなり怒り声を張り上げ、
≪「田舎の方」はそうかも知れないけど、「都会」の温泉では「席取り」禁止ですよ。あなたみたいな人が増えると困るので、受付に知らせてやるから……≫
と、言い残して足早く洗い場から受付の方へ。
≪なぁ~んだよぉ~、あの人の対応は。常識ある日本人ならば、「あら、失礼」と言ってさらっと他の席へ移るのが普通なのに、「逆切れ」して「ローカルルール」だって??全くも~う!!尋常じゃないわよ、あの切れ方は。予想外の反応に戸惑ってしまって言い返せなかったけど、戻ってきたら倍返しだわ。(`ペ´メ)フンッ≫
と、悔しい気持ちが込み上げてくるのを抑えきれず、女性が出て行った出入り口の方を睨んでたが、残念ながら彼女は戻ってこなかった。「精神修養」の足りない「朴」なので2か月以上経ってやっと腹立ちがおさまり、
≪「S」ラインのボディーでもないのに「スッポンポン」姿で「韓国の女性」×「日本の女性」の「国際紛争?」を起こして噂されたら……(冷汗)……やっぱり彼女、戻ってこなくて幸いだったわ~ ♬ ≫
≪ところでさあ~、あの日の「朴」って一体どこが悪かった??まるで「朴」が悪いことしたかのような対応だったけど?? ≫
「朴」が外国人であることに気づかず彼女、「田舎」の温泉の入り方と「都会」の温泉の入り方とは違うと言ってたけど、同じ日本人同士であっても地域によって「異文化」存在するようで、どうも「韓国」のルールと「日本」のそれとは大きな違いがあるみたいだなあ~。
「朴」が小学生だった「1960年代」の韓国は、35年間の日本統治時代(1910~1945年)が終わり、3年間の朝鮮戦争(1950年6月~1953年7月)が休戦に入って間もない頃で、道路や学校、病院、水道、電気、電話等々国民福祉の向上と国民経済の発展に必要な公共施設は勿論、生存の為の「衣・食・住」さえ不足していた時代でした。
※ 2015年に日本でも上映された韓国映画『国際市場で逢いましょう ☆ 原題: 国際市場』は、朝鮮戦争の痛みを経験し、貧困の時代を生き抜いた家族を描いた韓国「現代史」がよく解る涙と笑いの感動の物語です。まだ観てない方、必見ですよ!!
朝鮮半島が日本から独立した翌年(1946年)に発行された、アメリカの文化人類学者「ルース・ベネディクト(Ruth Benedict)☆ 女性だよ」の名高い日本文化論である『菊と刀』(原題:The Chrysanthemum and the Sword Patterns of Japanese Culture)には、
≪日本人の最も好むささやかな肉体的快楽の一つは温浴である。どんなに貧乏な百姓でも、またどんなに賤しいしもべでも、富裕な貴族と全く変わりなく、毎日夕方に、非常に熱く沸かした湯につかることを日課の一つにしている。……(中略)……彼らが毎日入浴するのは、アメリカと同じように清潔のためでもあるが、なおそのほかに、世界の他の国ぐにの入浴の習慣には類例を見いだすことの困難な、一種の手動的な耽溺の芸術としての価値をおいている。……(後略)≫
と、日本人の入浴習慣についての記述があります。
高度経済成長を成し遂げた韓国社会では、暮らしの質を高めるための「レジャー(leisure)☆ 余暇の遊び」「レクリエーション(recreation)☆ 休養・楽しみ」需要の拡散、そして2012年頃からは「힐링 ヒーリング(Healing)☆ 癒やし・治癒」文化が流行り出し、「한증막 ハンジュンマク(汗蒸幕)」「(24時間)사우나 サウナ」「찜질방 チムジルバン」「스파 スーパー」など、≪「入浴」+「遊び」+「α」≫の施設が盛業中。
でも、「朴」の子供の頃は、≪温浴を楽しみ湯につかることを日課としている≫日本人の入浴習慣とはやや距離があり、「リフレッシュ」「くつろぎ」「快楽」などを求め、入浴をする人はほんの一握りに過ぎず、「一般論」として「夏場」の入浴は、大概「お湯」ではなく「水」で汗を洗い流し暑さを避け、汗の匂いを取る「暑さ対策」が主目的。自宅で毎日「水」で体を流す人が殆どなのでこの時期の銭湯の多くは閉まってる。
当時は、自宅にお風呂を持つ家は稀で、例え、お風呂がある家でも「冬場」は一軒家の隙間風でお風呂場がさ~む~い~ので「風邪対策」として銭湯で清めるのが常識(ご参考までに、この冬一番の寒さであった2016年1月24日のソウル最低気温は「-18度」で、体感温度「-23.8度」。名古屋ではその翌日(25日)がこの冬一番の寒さで最低気温「-4.8度」)。「冬」の入浴は、溜まった汚れを除去し体臭を消す、よりストレートな表現で「垢スリ」目的。
ちなみに、湯船につかる理由は体を温めたり、血液循環を促進させたり、汗をかき体内の老廃物を排出したりするよりは、主に「垢」をふやかし落としやすくする為。
銭湯に通う頻度は「個人差」があるけど、普通「1週間に1回」から「x」「y」「z」の「変数」まで。毎日お風呂に入って体を洗ってても、お風呂上がりの際、擦ると垢が出るんだから「あの頻度」で銭湯に行き、タオルを固く絞って体をゴシゴシと擦ると、消しゴムのカスのような垢がボロボロと出る。よって、韓国人の入浴時間は「なが~ぁ~い!」、特に「女湯」は。
「日本の団塊世代」に似てるとも言える韓国における「朴」の世代の子供の頃は、銭湯の洗い場に「シャワー器」が付いてないのが普通で、「シャンプー・リンス」もなかったので石鹸で洗髪。脱衣場に「ドライヤー」なんか置いてなく、冬は「♬ ~ 洗い髪が芯まで冷えて ~ ♬(神田川の歌詞だよ~)」カチカチだった。
「銭湯の入り方」は、人によって順序違うと思うけど、
番台(フロント)で入浴料金支払い → 脱衣場 → トイレ → 脱衣 → 洗い場 → 掛け湯(石鹸で洗身)→ 湯船 → 垢すり → シャンプー → (石鹸で洗身)上がり湯 → (洗い場を出て)体の水分拭き取り → 着衣
「朴」はこのような流れだったんだ~。
≪「朴」の時代の韓国の銭湯のルールはこれ!≫
(1)銭湯には元々椅子と洗面器はセットしてあるけど、1960年代はモノ不足で自分で持っていく人が多かった。それはともかく、休日や混んでる時間帯は洗面器と椅子を確保し、蛇口がついている場所をキープする。
(2)ちょっとでも席から離れる際は、蛇口にタオルをかけ、洗面器にタオルを突っ込み、椅子の上に私物を置いたままにし、「ここ、使ってる~」と暗黙の睨みを利かせて離れる。置いてある私物が少ない場合は「忘れ物」だと勘違いされ、場所を取られるから要注意!
(3)もし、自分が湯船につかってる間に他の人に使われてたら、≪ごめんなさいね、お風呂セットが置いてあったでしょ、私が使ってたんだよ≫と言って、別の席に移動してもらえばいい。もし、お年寄りの方に使われ、場所主張されたら従っておいた方がいいよ~(韓国はお年寄り優先社会だからね)。
(4)逆パターンで、混み合っている洗い場、他に空きがなく、席に私物が置いてあっても「使用中」でなかったら、モノをどこかによけて短時間なら使ってもよし(私物を置く棚など元々用意されてない頃だよ~)。占有者が戻ってきて≪退きなさい≫と言われたら、≪すいません~≫と気さくな声で言って空いた席を探す。
(5)銭湯に行く際は普通、同伴者がいて(「朴」は母ちゃんと手を繋いで行ってた)「同伴者」が取ってある席に誰か座ろうとしたら、仲間意識を発動し≪他をお願いします≫と、他の空いてる所へ行ってもらい、背中の垢すりは自分ではなかなか難しいので、「連れ」と2人で仲良く背中を擦り合う。もし、「連れ」がない時は1人で来てる人を見つけて頼み、背中の擦り合い!!
≪これ、とても大事!!≫
「席」を下手に譲ったり、油断して取ってある席を取られちゃうと、たっぷり湯船につかって垢をふやかし、しっかり垢を落とす「女湯」では入浴時間がながぁ~いのでなかなか席空かないよ~。
韓国の洗い場での場所取りは「暗黙の了解」。いやいや、場所取り「OK」。いやいや、それが「絶対のルール」のような感じ。
ところでさあ~、≪韓国の常識は日本の非常識??≫日本の露天風呂付きの温泉に行ったら「ルール」う~んと違うね。「朴」って、これほど日本で長いのに日本人の感覚持ち合わせてないよね??「あの日」の「朴」の行為、常識を逸脱している事すら認識してないよ。まあ、「朴」の言ってる「ルール」って韓国の1960、1970年代頃の話だからなあ~。
「世代や時代」、「地域や国」によって「お風呂の入り方」が違うみたいけど、一番肝心なのは、「モノ不足」で皆が貧しかったあの時代、韓国人の殆どは心豊かで精神的余裕があり、「すぐ終わるのでお借りしますね」と言われたら「どうぞ」と、2人で一箇所を譲り合って使ってたよ。ちょっとしたマナー違反を指摘され逆切れし、喧嘩になる場面、めったに見かけたことなく、余計な気を遣わず楽に暮らしてましたよ ~ ♬ ~ ただし、昔の銭湯って地元の顔見知りが多かったからね。
(続 く)
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