1月7日の縁起物、「白馬」の節句のお話。
2022年1月6日
お正月、いかがお過ごしでしょうか?
今回は1月7日の節句行事のお話です。
1月7日は五節句のひとつ「人日」(じんじつ)といって、七草粥を食す日となっています。
かつて暦が新暦に変更されるまでは、日本では正月が春の始まりとされていました。春の若い植物を召し上がることで体内に健やかな気を取り入れようとしたのでしょうか。
今では「正月の疲れた胃を整える」と言いますが、昔は今ほど脂っこい食べ物は多くなかったはずです。それよりも、昔は若菜のみずみずしさに何らかのエネルギーを感じとっていたのではないかと思っています。
□白馬節会(あおうまのせちえ)
さて、この「人日」。
江戸時代に半ば無理やりのごとく作られた行事であることは前にも少し書きました。
▢過去記事
1月7日「人日」って何の日?七草粥の由来と、馬と松。
「おせち」はあるのに「節句」じゃない。お正月と人日の話。
人日が制定される前は何の日だったかというと、「白馬節会(あおうまのせちえ)」という節句行事が宮中において開催される一日でした。帝が厄災を祓うとされる白馬を観覧し、宴を催すというものです。今でも京都の上賀茂神社や大阪の住吉大社などでは神事としてこの行事が残されています。
立派な飾りをまとった白馬が駆けていく姿は勇壮でとても美しく、本当に良いことが起こりそうな気がしてしまうもの。
なぜ白馬のことを「あお」と呼ぶのかというと、元は黒よりも少し青みを帯びた馬を行事に使用していたからです。これが、醍醐天皇のころになって白馬を用いるようになり、「あお」という名前だけが残されたとされています。
□白馬の飾りの材料がすごい
最近は正月に馬の飾りを求められる方は少なくなりました。(午年を除く)
それでも、端午の節句用や海外への贈答品用に馬飾りを求められる方は、ありがたいことに毎年全国から訪れて下さいます。端午の飾りで買われた方は、ぜひ1月7日にも飾ってあげて下さい。験担ぎにはぴったりのものですので。
ところで、この馬の体表の毛並み、何で出来ているか分かりますか?
□正解は、「和紙」
体は桐塑(とうそ)という桐の木の粉を粘土状に固めたもので成形してあり、その上に和紙を細長くちぎって貼り付けているのです。手でちぎることによって和紙の繊維がほどけ、まるで動物の毛並みのように表現されています。
この和紙には、福井県の越前和紙の「奉書紙(ほうしょし・ほうしょがみ)」が使われています。
越前の清らかな水で漉かれた美しい奉書紙が、縁起物の白馬の毛並みとして使われ、正月や端午の節句の縁起物として愛されています。
春の七草と白馬。そして自然の恵みによって作られる美しい和紙。節句というのは自然からは切り離すことができない文化です。何となく繋げてきた文化でも、実は「意外と科学的かも」と思えるような理由があるものです。
例えば、この「奉書紙」はかつて天皇などの高位の方が用いた貴重な紙です。実はそれが馬の毛並みには一番使いやすくて、なおかつ美しい。「使いやすさ」と「見た目」が何故か「縁起が良さそう」というところにも繋がっているのです。
案外、古くからの「ならわし」が一番理にかなっていることだったりするのかもしれません。自然の大切さやそれによって作られるものの美しさ、それによって育まれる人々の感受性、文化。そういうところをお伝えしていきたいと思っています。
皆さまの一年が健やかであることを願って、1月7日の縁起物、白馬の飾りのお話でした。