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浅田英夫の星の歳時記

スピカ

2013年7月5日

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おとめ座は、正義の女神アストレイアと農業の女神デメテルの二役を演じている


2番目に出会うのは、おとめ座のスピカ。明るさは0.98等。青白い清純な光を放つ1等星スピカは、まさに控え目なおとめ座の象徴。4月の宵、うしかい座のアルクトウルスより少し遅れて昇る。古代バビロニアではスピカの位置に麦の穂を描き、ギリシャ時代には麦の穂を持つ女神の姿を描いた。スピカとは「麦の穂のトゲ」というような意味だ。

スピカと呼ばれるようになったのは、農業の女神デメテルの象徴であり、西洋人の主食のパンの原料でもあるからなのだろうか。それとも心を突き刺すような青白い輝きが、細く長い麦の穂を連想させたのだろうか。

スピカは、青白い清純な光を放つ1等星。


スピカのことを日本では、清楚な純白の光を放つことから、“真珠星”と呼んでいる。いかにも花も恥じらう乙女にふさわしい命名ではないか。

麦の収穫のころに南中するアルクトウルスとスピカ。日本ではアルクトウルスを、色合いや麦の収穫時に南中する季節感を感じる星として、「麦星」と呼んだ。また、西洋ではスピカを、古代からの伝説や、星座とのかかわりから麦にたとえている。世の東西の人々が、同じ季節に南中する違う星に麦にまつわる名前を与える感性の違いがとても興味深い。

スピカのことを、日本では真珠星と呼ぶ。


【男と女】
うしかい座は男性、おとめ座は女性の星座だが、日本でもアルクトウルスを“男星”、スピカを“女(おなご)星”と名付け、夫婦星と呼んだ。七夕の牽牛・織女のように男女のペアに見立てている。アルクトウルスは、固有運動がとても大きい星で、あと5万年もすると、アルクトウルスとスピカは仲良く並んで、名実ともに夫婦星になる。

今から5万年後には、アルクトウルスとスピカが並んで名実ともに夫婦星となる。


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