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岐阜薬科大学のあなたの健康に役立つ話

骨粗しょう症について

2021年12月10日

厚生労働省の平成28年国民生活基礎調査によると、運動器疾患は、要介護・要支援になる原因の第1位ですが、その中で、転倒骨折が12.1%、関節疾患が10.2%を占めており、骨粗しょう症や変形性関節症を代表的な疾患として挙げることができます。

骨粗しょう症は、「骨を造る(骨形成)と骨を壊す(骨吸収)」のバランスが崩れることによって発症します。ところで、骨粗しょう症は怖い病気なのでしょうか?

答えはYesです。

国内には約1,300万人の骨粗しょう症患者さんがいると推定されていますが、その中で実際に治療を受けている方はその2割程度ともいわれています。実際に、「骨粗しょう症になっても、少し骨が減って脆くなっているだけで、骨折さえしなければ問題ないのでは?」と思っている方が大勢います。

骨折しやすい部位として、脚の付け根、手首、腕の付け根、背骨が知られています。「いつのまにか骨折」という言葉がありますが、高齢者ではいつのまにか骨が折れ、いつのまにか治っている、という状態を繰り返す方もいます。「いつのまにか骨折」を繰り返し、いつのまにか成人の時に比べて身長が低くなり、背中も常に曲がった状態になってしまいます。

また、50歳以上の女性が生涯骨折する確率は3人に1人、また男性では5人に1人と言われており、骨折はともて身近な問題です。

脚の付け根を骨折すると、骨折してから1年経過しても40%の患者さんは元の歩行状態に戻れないとの報告があります。さらに、脚の付け根を骨折すると、寝たきりの状態になるケースも少なくなく、骨折後1年以内の死亡率は20%を超えるとの報告もあります。骨粗しょう症患者さんは女性の方が多いですが、骨折後に死亡する確率は、男性の方が多いとも言われています。つまり骨粗しょう症は、とても怖い病気である、ということです。

骨粗しょう症の原因として、閉経や加齢に加えて、遺伝的な要因や栄養障害も知られています。また特定の薬剤の服用が原因であることもよく知られています。例えば、ステロイドを年単位で使用している方の約半数に骨粗しょう症が生じていることも報告されています。糖尿病治療薬や抗うつ薬の中にも骨粗しょう症を引き起こす可能性のある薬物があります。

骨粗しょう症の治療法あるいは予防法には、生活習慣の改善、食事療法、運動療法、あるいは薬物療法などがありますが、各個人の状況に応じてこれらを適切に組み合わせることが重要です。

次回は、「骨粗しょう症の治療薬」についてお話ししたいと思います。

檜井 栄一 岐阜薬科大学機能分子学大講座薬理学研究室教授 

2003年3月、金沢大学大学院を修了し、博士号(薬学)を取得。1998年6月、チェコ国立科学アカデミー生理学研究所生理学部門客員研究員、2002年7月、米国ハーバード大学医学部・マサチュウセッツ総合病院客員研究員として骨軟骨組織の発生と機能に関する研究を行う。03年4月、金沢大学薬学部薬物学研究室・助手に着任。06年4月、米国ベイラー医科大学分子遺伝学研究室、同年7月からは、米国コロンビア大学遺伝発生学研究室で博士研究員として骨粗しょう症治療薬の開発研究に従事した。09年5月、金沢大学医薬保健研究域薬学系薬理学研究室・准教授を経て、19年7月より現職。同年10月、岐阜大学大学院連合創薬医療情報研究科教授も兼務している。

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