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岐阜薬科大学のあなたの健康に役立つ話

日本はワクチン後進国なのか?

2014年7月12日

小さなお子さんをお持ちの方は、小児科の先生に、「新しいワクチンが、国で認められましたので、ぜひ打ちましょうね」と言われ、忙しい中接種スケジュールを作っても、お子さんが風邪をひくとスケジュールを作リ直すなど面倒なことになってしまいます。

それでも専門家としては、小児科の先生の話を聞いて、お子さんがワクチンで防げる感染症にならないように接種をしていただきたいと思います。

現在、一般の人向けで、細菌に対するワクチンが6種類、ウイルスに対するワクチンが13種類あります(表を参照ください)。

表 わが国の予防接種(一般の人向け)


単品ではなく、この中のいくつかのものを組合せた混合ワクチンと呼ばれるものが実際には使われています。また、海外渡航者向けのものが含まれています。

日本はワクチン後進国と叱責され、この数年間に相当数のワクチンが導入されました。そうした新顔には、肺炎球菌やHibといった細菌に対するワクチン、ウイルスではロタワクチンやHPVワクチン、そしてこれまでの生ワクチンから不活化ワクチンに置き換えられたポリオなどがあります。

今年の秋からは、水痘(水ぼうそう)のワクチンも定期接種になる予定です。

定期接種になっていないワクチンを接種してもらうためには、地方自治体が補助金を出していない限り、数千円から1万円を支払う必要があります。2人お子さんがいて、3種類そうしたワクチンをお子さんに受けさせようとしたら、数万円という馬鹿にならない出費になってしまいます。

「そこまでしなくても、わが子は元気だし大丈夫!」と思っていませんか?「この感染症にかかると1週間は保育園に行かせられないから、パートに出かけることもできないですし、医療費だって馬鹿になりませんよ。」と言われたら、どう考えますか?

接種費用の問題は、個人の努力だけではなく、国が多くのワクチンを定期接種化することが大変大事なことだと私は思っています。

米国で10年生活した経験から言うと、日本はワクチンそのものの導入が遅れた国というわけではなく、実はメディアも含め多くの人が、自分から各ワクチンの良いところとリスクを学ぶという積極性に欠けるところに問題があるように思われます。

ワクチンが存在するというのは、感染症になってしまうデメリットの方が大きいということが前提になっていることを、ご理解いただければ幸いです。

新しいワクチンの導入に当っては、厚生労働省の予防接種部会などでもワクチンのメリットとリスクなどをまとめた「ファクトシート」を作成して審議の材料にしていますので、参考にされてください。

私自身が直接作業に関わった水痘ワクチンの資料はこちらからダウンロードできます。

また、英語に自信のある方は、WHOがまとめているVaccine Position Papers の2014年版に様々なワクチンの最新情報がまとまっていますので、参考にしてください。

井上直樹 岐阜薬科大学感染制御学研究室・教授


東京大学理学部生物化学科卒業、同大学院修了(理学博士)後、国立感染症研究所や米国疾病対策センター(CDC)などの感染症専門研究機関に勤務。専門は、ウイルス学。米国アトランタとシアトルに10年在住。昨年10月に国立感染症研究所より、岐阜薬科大学に着任。新たなワクチン・治療薬・病原体検出法の開発やその基礎となるウイルス学や免疫学を研究。趣味は、スキューバーダイビングと実験。

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