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小田忠先生の『モノでまなぶ世界と日本』

キルナ(スウェーデン)の鉄鉱石

2015年3月4日

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キルナの鉄鉱石


自慢だがキルナ(スウェーデン)の鉄鉱石を持っている日本人(地理教員)はそうはいない。おそらく私だけであろう。ありがたいことに生徒からいただいたものである。自慢の実物教材である。北欧の授業で紹介したところ、かつての教え子が私に持ってきてくれたのだ。現在はトヨタ自動車に勤めているとか。

どれだけ熱弁をふるっても、いくらうまく説明しても実物にはかなわない。鉄鉱石を実際に手に持ってもらい、重さを実感してほしい!鉱石の手触りや磁石と共に強い磁力がある「磁鉄鉱」であることも確認しよう!

さてキルナ鉱山は北極圏にある。夏は白夜だが冬は暗く冷たい闇夜とオーロラの世界。トナカイと共に生きてきたスカンジナビア半島北部の先住民サーミが住むラップランド。サーミの赤い民族衣装は、コカ・コーラのCMでサンタクロースのモデルになってしまった。

本当のモデルは実在したトルコの聖(セント)ニコラウス。気になり調べたところスウェーデン・フィンランド・ノルウェーのスカンジナビア半島の国々の他に、ドイツ・デンマーク・カナダなど約20か国にサンタクロース村があることがわかった。全てにせものだ。

鉄は隕石からもたらされた隕鉄と製鉄所のものがある。鉄は固く強いので、昔から武器や建築に使われてきた。日本の近代化も八幡製鉄所によるところが大きい。現在も鉄の時代だが、鉄鋼の生産は圧倒的に中華人民共和国が多い。

昔の日本は「たたら製鉄」。燃料に大量の木材(木炭)を使うので、はげ山となり、川は洪水や土石流となって人家や田畑をおそう。ヤマタノオロチの正体と鳥取砂丘の成因は土石流との説がある。

また、島根県の「安来(やすぎ)節」はどじょうすくいの民謡だが、どじょうは「土壌」=「砂鉄」であるという。砂鉄はたたら製鉄の原料だ。ジブリ映画『もののけ姫』にも描かれている。たたら製鉄でつくられる純度の高い玉鋼(たまはがね)から日本刀がつくられる。

さらに熱を加えて何度も叩くことで不純物が外に出される。インドにも古代につくられた錆びない不思議な鉄柱があり、世界遺産に指定されている。

スウェーデンの有名企業は家具のイケアとサーブとボルボ。サーブは自動車から航空機・戦闘機までつくっている。どちらも鉄鋼を使っている。SAABと記すが、私の世代は男女4人組“アバ(ABBA)”を連想してしまう。

ボルボは自動車メーカー。普段何気なく利用している自動車の「シートベルト」はボルボのおかげだ。ダイナマイトを発明して巨万の富を築いたノーベル(ノーベル賞)も忘れてはいけない。

キルナの鉄鉱石は、夏期はボスニア湾(バルト海)のルレオから、冬期はバルト海が凍るため、隣国ノルウェーの大西洋岸、ナルビクからヨーロッパ各国へ輸出される。ナルビクの沿岸は北極に近い高緯度にもかかわらず、沿岸を暖流(北大西洋海流)が流れる不凍港(1年中凍らない港)。昔からの地理の授業の定番だ。

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