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野球ライター尾関雄一朗のアマチュア野球取材ノート

「補欠でもやれると示したい」 全国大会とプロを狙う伊勢の快腕・鈴木貫太朗(皇學館大)

2021年5月20日

東海地方の大学野球は、愛知県の大学で構成する「愛知大学リーグ」と、岐阜、三重、静岡の大学が加盟する「東海地区大学リーグ」に分かれます。このうち東海地区大学リーグは、各県でリーグ戦を行い、それぞれの1位校がさらに3県の頂点をかけて争うシステム。優勝校は、6月に開催される全国大会(大学選手権)の出場権を手にします。

この東海地区の選手権大会が22日、長良川球場で開催されます(無観客での開催)。三重県は皇學館大、静岡県は日大国際関係学部がリーグ優勝を飾り、駒を進めました。岐阜県はリーグ戦の上位3校が新型コロナウイルスの影響で出場できなくなり、4位の岐阜聖徳学園大が繰り上がります。

今回紹介するのは、三重県の代表で伊勢市にある皇學館大のエース投手。大学で頭角を現した無名の右腕が、チームの全国大会出場とプロ入りを狙います。


鈴木 貫太朗(皇學館大4年・投手)

この春のリーグ戦では22イニングスを投げ防御率0.82の好成績。森本進監督は「ストレートのスピードがあり、変化球も器用。しっかりトレーニングを積み、3年生になった頃から大きく成長してきた。精神面での成長が飛躍につながっている。調子が悪くても相手に点を与えない、勝てるピッチングをしてくれた」と称えます。

鈴木貫太朗(皇學館大4年/181cm・82kg)


中学、高校を通じて控え選手。本人は「高校3年の夏の大会が終わったとき、大きく悔いを残してしまった。それまでの自分の取り組み方に納得できず、これでは支えてくれた家族にも申し訳ない気持ちで…。大学で野球を続けるからには、しっかりやろうと思った」と振り返ります。

大学で志を高くもち、体力強化と技術習得に腐心。他の選手や理論から学ぶだけでなく、自身のSNSにトレーニング内容や投球フォームで意識すべき点、試合で感じたことなどを綴り、インプットとアウトプットを重ねてきました。「気づきが増え、感覚を文字に起こせるようになり、結果にもあらわれている」といいます。

ストレートは最速146キロ。大学2年秋の鈴木の投球を筆者が見たときも、球速140キロ台をマークしていて素材の良さを感じましたが、この春はより一層“投手らしさ”を増し、制球も良くなっていました。「以前は単に力いっぱい投げるだけだった。体にキレを出し、いかにラクに投げられるかも考えた」と工夫を明かします。「体の柔らかさ、特に肩甲骨の柔らかさは自分の特徴。もっと生かしていけば、150キロも超えられるはず」と描きます。

鈴木の投球を視察するため、球場のスタンドにはプロ球団スカウトの姿も。「中学、高校の補欠でも、上の世界でやれることを示したい。自分はもっと伸びることができると信じているし、絶対にやります」と力強く誓ってくれました。


三重学生リーグ ミニルポ

三重学生リーグは、今や日本球界の大投手となった則本昂大(楽天)を輩出したことで知られています。則本が在学した三重中京大が2013年で閉学となり、現在は近大高専皇學館大鈴鹿大三重大四日市大の5大学がしのぎを削ります。

本稿前半で紹介した鈴木が登板した先月11日は、他大学の投手たちも好投を見せていました。

近年のリーグ戦で、皇學館大と勢力を二分することが多い四日市大。角井洸太(4年)は昨年夏の公式戦で、社会人の企業チーム・永和商事ウイング相手にも好投した実力の持ち主です。球にキレがありコントロールが良く、高いレベルで安定しています。

角井洸太(四日市大4年)


その四日市大を相手に、2失点で完投勝利した国立の三重大・神田龍利(4年)。小柄で球そのものの凄みはなくとも、相手打線に自分のバッティングをさせず、かわしました。

神田龍利(三重大4年)


鈴鹿大の田中創大(4年)は左のサイドスロー。その変則的な特徴を生かした投球が印象的で、ストレート、タテ横の変化球をうまく散らしていました。

田中創大(鈴鹿大4年)


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