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朴美姫のもっと知りたい、韓国の魅力

韓国の住まいに革命!

2013年9月20日

「朝鮮時代」の伝統的な集落の背後には、たいてい「山」があり、山の中腹には「死者」の家である「お墓」がありました。「陰宅風水」の詳細は難しく、長くなるので簡略にまとめますと、

◆「山」は高いが、動かないので「陰」に属す。
◆「山」は風を受ける。「生気」は風を受けると散らばる。
◆ 故に「山」は「墓地」に適し、「墓地」には生者の家は建てない。

とのことです。

一方、日本の「戦国時代」には、武士が長期の戦いに耐えられるように、山上には城主の「城」、その中腹には家臣達の「城下町」を構え住まわせるといった様式が一般化したよう……

(ここまで書いて気づいたのですが)日本統治時代、ソウルの「南山」の麓に日本国により編成された「朝鮮軍司令部」や「日本公使館」を配置し、「南山」一帯を日本人居留地域に指定していた背景には、「戦国時代」の「山城と城下町」の影響が潜在していたのでは?!)

京畿道「坡州 파주 パジュ」にある朝鮮時代の儒学者 「栗谷・李珥☆율곡・이이 ユルゴク・イイ」先生(1536年~1584年)の家族墓


韓国人が「お墓」以外に山に建てるのは、「昔々ある山の奥のあばら家に、年老いた母と心の優しい息子が住んでいました。家が貧しく適当な結婚話もないので……」で始まる「貧乏物語の主人公の住まい」や「お寺」くらいで、「生者」の家を山に建てることは一般的ではありませんでした。

このたぐいの昔話は今日の「韓ドラ」に伝承され、身分の差を超えて「玉の輿」に乗るあらすじの「貧乏人主人公の家」の殆どは、長い坂道を上り、急な階段を上がった先。

都市部で極貧層が居住する過密化した地区。都市の他の地区が受けられる公共サービスが受けられない状態にある状況を「スラム☆貧民街」と表現します。

「タルトンネ 달동네 月の町」=「貧民街」とは、山の尾根や山裾の急斜面などの高い場所に極貧層が集まって、不良住宅に住んでいる町を指す語です。

「달 タル」とは「月」の意で「동네 トンネ」とは「町」の意です。高い所に位置するので「月に近い」ということから名付けられました。

ソウルの最後の「달동네(月の町)」である「개미마을 ケミマウル(蟻の村)」は、「蟻」のように仕事ばかりしている人々が集まって住んでいるということから由来


韓国発情報紙は≪1950年代、朝鮮戦争をきっかけに北朝鮮から移住してきた人々を中心とする都市貧困層は、ソウルの「淸溪川 청계천 (チョンゲチョン)」沿いに集中していて、米軍基地から出る「板」で家を建てたので、「板村 판자촌 (パンザチョン)」と呼ばれていた。

このような「板村」は、1960年代以降、農村を離れ都会に移住する離農者の増加により、都市貧困層が急増する現象が起き、ソウルの外郭地帯へと広範囲に拡散した。離農者たちは、国公有地である「山地」を占有し、板で家を建て山の谷間を一杯にし、ほぼ山のてっぺんまでに至った。

その過程で「板村 판자촌 (パンザチョン)」は「タルトンネ 달동네( 月の町)」に名前が変わった。≫と記している。

1960年代から急激に進んだ工業化が生み出した社会的なひずみも相当なもの。

ソウルの「山」には現在、経済格差の極端な両階級が共存する。政・財界の有名な人々が豪邸を建て居住する「富村 부촌 (プチョン)」 = 「高台・山の手」。一角には、極貧層・不良住宅に代表される「タルトンネ 달동네(スラム街)」。

故に、「財閥」と「貧乏人」が出逢えるチャンスが度々あり、「財閥二世」と「極貧者の子」とのラブスト―リーが始まり、「玉の輿に乗る」との「韓ドラ」が誕生するわけである。

高級住宅が並んでいる山の手「平倉洞 평창동 (ピョンチャンドン)」の様子


高台「城北洞 성북동 (ソンブクトン)」にある高級住宅の庭園の風景


イタリアのベネチアは水上都市で有名。川や運河が張り巡らされた中国の蘇州は水の都、東洋のベニス(ベネチア)と言われています。タイの水上マーケットも大人気。水辺に発展してきた世界の大都市は多く、江戸では運河を掘削する大工事が行われ、江戸の中心部の約2割は水路が占め、舟運が物流を支えた水辺の大都市だったらしい。

一方、「陽宅風水」では、宅地内には水を引いたり池を造ったり、川沿いに家を建てたりするのは「凶」として扱われ、避けられてきました。

◆ 水が流れる場所は低地帯。故に大雨・集中豪雨による災害を受ける。
◆ 川沿いの敷地では地盤が軟弱なことも多いため、場所によっては地盤沈下。
◆ 湿気が多いと身体に良くない。
◆ 水辺は気温が低いので冬寒い。
◆ 水霧(川霧)が立ち、視程が悪い。
◆ 池には虫が寄ってくる。

等によりますが、現在の「西洋の地理学」にも当てはまる理論です。

★ 西洋からの新たな建築材料・建築施工法による水辺建築の耐水性の向上。
★ マイカーの普及やエネルギー革命による厳しい気候への適応が可能。
★ 住宅に関する意識やライフスタイルの変化。

等が拍車をかけ、韓国の富裕層では生活の質を高める環境作りのため、「山」からの眺めや「川」の景観が重視され、中国で生まれた「風水地理説」では、禁忌とされていた「山」は「高台・山の手」として、「川沿い」は「リバーサイド」と呼ばれる一等居住地として人気絶頂。

宇宙観の基本が「天動説」から「地動説」へと転換したように、韓国の住まいにも革命が起こっています。(続く)

1960・1970年代にソウルの「淸溪川」沿いに集中していた 「板村 판자촌( パンザチョン)」の光景


「漢江 한강 (ハンガン)」周辺に展開する高級マンションの風景


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