発掘 グッドプレイヤー!好きな言葉は“情けは人の為ならず”看護師志望の好左腕 木曽川高校・栗本怜
2022年11月23日
多くの報道関係者は年間を通じて“ドラフト候補”になり得る選手について報道。
プロ野球ドラフト会議は、WBCや日本シリーズ、春夏の甲子園などと並び、球界で最も盛り上がるイベントであることは間違いのない事実です。
部員の減少顕著
ここで注目したいのが、日本高等学校野球連盟HPにて公表されている登録部員数。
平成25年の170,312人をピークに、令和4年は131,259人まで減少。
今年の第104回夏の愛知大会参加校は186校ですが、出場チームは175。
単独チームで試合成立に必要な9人の選手を登録できない学校同士がチームを組む連合チームは5。
これらの数字を見て分かるとおり、野球人口の減少が顕著です。
ドラフト候補だけがプレーヤーではない
3月に本コーナーで同朋高校、津島北高校の好選手を紹介。
取材時の部員数はそれぞれ13人、11人。
取材を通じて、そのことを肌で感じ、「ドラフト候補や甲子園中心にスポットを当てるアマチュア野球界でよいのか?」そう自問自答しながら執筆しています。
このような状況で私にできることは、「どこの学校で野球を取り組んでも見ている人はいる」ということを認識してもらい、野球に取り組んでくれる選手や関係者を増やして裾野を広げたい。
そのため野球強豪校と言われる学校ではなく、一般的な高校の好選手にスポットを当てていくことができればと考えています。
発掘グッドプレイヤー
少し話題が暗くなりましたが、今回紹介する選手は、「こんな素晴らしい選手が公立高校にいるのか」と思わせてくれるグッドプレイヤー。
ぜひ名前を憶えていただき、今後に注目していただければと思います。
中学3年時は県大会決勝のマウンドに上がった好左腕
「好左腕がいる」。その噂を聞きつけ、11月12日(土)に木曽川高校グラウンドへ。
キャッチボールを見た瞬間に「この子だな」と感じさせるオーラを纏った左腕が。その投手の名は栗本怜。
「3つ年上の兄が楽しそうに野球をやっていたことが始めたキッカケです」と小学校3年生で野球を始め、中学は強豪の木曽川ボーイズに入団。最終学年になると主にリリーフを任され、「3年の時に県大会決勝のマウンドに登った時は、この時のために野球をやってきたんじゃないかという気持ちでした」と当時の充実ぶりを物語る晴れやかな表情。
ご両親曰く、「物心ついた時から人の命を救う看護師になりたいと言っていた」という栗本。
「野球だけじゃなく、夢である看護師を目指して勉強面を重視しました」と木曽川高校へ進学。入部直後の1年春から外野手としてレギュラー。秋からはエースの座に。
4回終了時点で6奪三振
取材当日、阿久比高校との練習試合に先発した栗本。噂に違わぬ快投乱麻の投球を見せる。
「ストレートあっての変化球だと思っています」。そう話すように、小さいテイクバックの投球フォームから手元で動く独特な軌道のストレートを放つ。
また、カーブをはじめとした5種類の変化球を駆使する投球で4回終了時点で6奪三振。
5回以降は「(4回までに)少し球数が多くなったので、打たせて取るよう指示しました(木曽川高校 加藤壮一郎監督)」と投球をシフトチェンジ。
以後は凡打の山を築いて、投球数129 被安打3 失点1の完投勝利。
シュアなバッティング能力も「ピッチングよりも自信があります」との言葉どおり、4回表にライトへ鋭く運ぶ先制タイムリーヒット。そして9回表にはライナー性の伸びる打球がセンターオーバーとなる3点タイムリースリーベースヒット。投打ともにチームに欠かせない存在であることを印象付けた。
印象に残ったのは、打者に対して初球の変化球でストライクを取れる制球力。
ストライク先行で早めに追い込むことで主導権を握り、打者を牛耳っている印象。
右打者の外に逃げ、左打者のインコースに食い込んでくるストレートは魅力。トレーニング中心となるこれからの季節。一冬越せば自己最速の132kmは140kmに迫る可能性は大いにある。
“情けは人の為ならず”
先述のとおり、「人の命を救いたい」と看護師になることが将来の夢。
理系のコースに在籍し、定期試験では常に上位5番前後にランクイン。国公立大学を志し、学業面でも周囲を感嘆させる。
そんな栗本の好きな言葉は“情けは人の為ならず”。
友人と甲子園球場に野球観戦に訪れた際、梅田駅で切符を落とすも、見知らぬ人が「切符が落ちたよ」と教えてくれた。
「その人にとっては小さいことかもしれないけど、教えてくれて嬉しかった。もしそのまま無くしていたら大騒ぎ。世の中にはいい人が多いから、自分も他人に優しくしたい」。
この出来事から改めてその言葉を意識するとともに、他人のためになる看護師という職業に就きたい思いが強くなったと話す表情に迷いはない。
対戦したい選手
高校野球での目標は、「上手い打者なので抑えることができれば自信になるので対戦したい」と尊敬の念を抱く、中学時代のチームメイトである二松学舎大付の青木大成内野手と対戦して抑えること。
筆者から、「その目標を達成するためには甲子園に出場しなければいけないね」と投げかけると、笑みで応えた。
看護師になる夢、そして青木との対戦。どちらの夢も叶えてほしい。
関係者コメント
木曽川高校 加藤監督
「投打の支柱。しっかり自分を持っていて、引き出しが多い選手。木曽川高校野球部のモットーである“自分たちで考えて行動に”を大切にして、自ら考えて反省できる人間になって欲しい。そして、『コイツが打たれたら仕方がない』と思われるようにチームの信頼を掴んでほしいと思います」
近藤蒼一郎主将(2年)
「普段はマイペースですが、投球時の勝負強さが魅力です。これは内緒ですが、よくギャグを言って一人で笑っています(笑)」
石井美羽マネージャー(2年)
「少し感情が顔に出やすいですけど、気持ちが強い。自分を持っている投手です」
最後になりますが、今回取材した木曽川高校も2学年で部員は8人。
取材当日は引退した3年生が出場。部員数が増え、単独チームにて春の公式戦に挑めるよう願っています。
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