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野球伝道師・梅本憲が伝えたい情熱アマチュア野球 〜届け熱い思い!~

「指導者歴40年の中でNo.1」あの157km右腕を抑えて新人賞受賞の東海学園大学の最速146km右腕・高橋一壮が完全復活へ![2024年愛知大学野球2部リーグ注目新4年生特集 後編]

2024年4月3日

「指導者歴40年ぐらいですが、ストライクが入らなくて、打者ではなく自分と戦うことしかできない投手を多く見てきました。制球に苦しむことなく打者と対峙(たいじ)できている投手は初めてですよ。対戦相手を含めて何百、何千人と投手を見てきましたが、No.1です」

東海学園大学(以下:東学大)・鈴木保監督が興奮気味に語るその投手は、最高気温が10℃と寒さが残る3月10日(日)に行われた朝日大学とのオープン戦に先発。
投球回5を被安打3の無失点。投球数75の7割以上をストレートが占め、バットの芯でとらえられた打球は皆無。この日、自己最速の146kmを計測するなど8奪三振を奪い“完全復活”と言える投球内容を見せた高橋一壮(かずまさ)

東海学園大学 高橋一壮(たかはし かずまさ 投手 173cm82kg 右投右打 50m6.5秒 遠投100m  一西シャークス ー 豊川中央ボーイズ ー 愛産大三河高校 2003年3月6日生)


印象的だったのは得点圏に走者を背負った際に引き締まる表情。そして「ギアが入った!」と躍動感が増す投球フォーム。

右半身でしっかりタメをつくり、その指先から放たれたストレートは糸を引くように外角低めに寸分なく制球される。その威力は「走者が三塁にいても、点を取られるとは思えない」(鈴木監督)と打者だけでなく、味方をもうならせる。
それに加え、手元で小さく鋭く曲がるカットボールや、横に滑るようなスライダーなどの切れ味鋭い変化球を織り交ぜ、打者をきりきり舞いさせた。

3月10日(日)対朝日大戦(会場:東海学園大学野球場)で力投する高橋


あの157km右腕を抑え1部リーグ新人賞受賞


大学進学の際に、複数校から勧誘を受けた高橋。東学大に進学を決断した理由は、「一番に声をかけてくれたのが東学大さんでした。求められているところでやりたい」。

「高校の時から、モノが違うと思った」(鈴木監督)と、入学早々の2021年度1部春季リーグから先発投手として起用を受ける。
その期待に応え、3勝1敗 防御率2.51の好成績を残し、先日侍ジャパンのトップチームに召集された157km右腕 愛知工業大学・中村優斗投手(同シーズン 1勝3敗 防御率1.55)を抑え、最も活躍した新入生に贈られる新人賞を受賞。2020年度秋季リーグ6位の東学大を2位へ導く原動力に。

1部リーグの主会場であるパロマ瑞穂野球場での投球シーン(撮影:2021年10月)


トミー・ジョン手術


新人賞を受賞し、順風満帆な大学生活のスタート。同秋は3試合に登板し、1勝1敗。誰もが飛躍を期待した2年の春。
右肘の違和感が高橋を襲い、リーグ戦を途中離脱。エースを失ったチームは意気消沈。入替戦も敗れ、無念の2部降格を味わう。

その直後の2022年6月20日に右肘の靱帯再建手術(通称:トミー・ジョン手術)を受けた。
その決断を「保存療法は再発の可能性があり、手術をすると復帰には1年ぐらい。社会人野球を目指したいと思っていましたので、完治を目指すため手術を選択すること時間はかかりませんでした」と振り返る。

リハビリ期間が始まると「やれることをやるだけなので」とスクワットやデッドリフトなどの下半身を強化する筋力トレーニングなどに取り組み、経過は良好。
それらが功を奏したか、昨秋に「球数は60球で登板は週一度」(東学大・上原晃投手コーチ)という条件付きながら、リーグ戦で復帰を果たす。
その残した成績は言わずもがなだが、5試合に登板し1勝。12回2/3の投球回に対し、奪三振は12。防御率は0.00と他を凌駕する投球で復活をアピールした。

昨秋、リーグ戦復活登板した高橋(撮影:2023年8月27日)


この春で1部に


「お医者さんにも手術前の状態に戻っていると言っていただけました。やってよかったと思います」と凛とした表情で話す高橋。右肘の状態が良好であることがうかがえる。

「この春で1部に上がれないと、その舞台で投げることができなくなります。鈴木監督にも『お前じゃ負けれない』と言われています。目指す数字は防御率0.00。そうすれば負けることはありません」。
上原コーチからも「一壮を軸としてリーグ戦を戦います。体と相談しながらですが、先発して完投してもらいたい」との期待を受けた。

自身の立つべき場所に戻り、さらなる輝きを放つためにもリーグ戦フル稼働を誓う。

取材当日、写真撮影に応じる高橋


仲間と共に


高橋について「守っていて、テンポが良くて無駄な四球がありません。打者が苦しんでいる様子が分かり、頼りになります」と力を込めて話すのは主将の友田雄貴(4年 浦和学院)。
昨秋は持ち前の堅守に加えて、打率.387 出塁率.513 本塁打1 得点8とバットでも結果を残した東学大の大黒柱だ。

キーマンとなる選手を高橋に問うと、「元気が良くて、守備も人柄も信頼できる。友田が良いプレーをすればチ―ムが盛り上がります」と頬を緩め、友田の名を挙げた。共に1部でプレーした盟友であり、心を許せる存在であることが伝わってくる。

1部に戻るためには、ベンチ入りメンバー、そして部員全員の結束が必要不可欠。
「高橋以外飛び抜けた存在はいませんが、その分昨年よりチームは一つになっています」とチーム力に自信をのぞかせる友田。“仲間と共に”戦う東学大に注目だ。

東海学園大学主将の友田雄貴内野手(4年 浦和学院)。守備位置に立つ際、心を落ち着かせる意味も込めてグラウンドに「この回もよろしくお願いします」と必ず一礼する姿が印象深い


身近な先輩がドラ1でプロに


高校の1学年先輩である上田希由翔(きゅうと 明治大学)が2023年プロ野球ドラフト会議で千葉ロッテマリーンズから1位指名を受けた。
「プロに行くとは思っていました。高校に入ってから、上田さんの練習に取り組む姿を見て、自分の考えが甘いと思いました。そこから影響を受けて練習に対する姿勢が変わりました。自分も社会人を経由してプロを目指したい」と言葉を紡いだ高橋。身近な先輩がプロに進んだことは、憧れの世界を現実として意識するには十分な事実だ。

身長173cmと決して大きくないが、トレーニングの成果が見えるパンと張った高橋の太もも。それを見ると、近い将来にプロ野球ドラフト会議で名前が呼ばれることは夢物語ではない。

愛産大三河高校2年時の高橋(左)。右は上田希由翔(右)(撮影:2019年7月 対豊明高校戦 会場:熱田球場)


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